世界的な論争を巻き起こしていた一戦で涙ながらに敗れた戦士は、謝罪の言葉を口にした。

　現地時間8月1日に行われたパリ五輪のボクシング女子66キロ級の2回戦に登場し、イマネ・ケリフ（アルジェリア）と対戦したアンジェラ・カリニ（イタリア）は、わずか46秒で棄権するというまさかの結末を「申し訳なく思う」と謝罪した。

　そもそも世間で物議を醸し、重圧のかかる一戦だった。というのも、昨年の世界選手権で国際ボクシング協会（IBA）が実施した性別適格性検査に不合格となったケリフには、同大会への出場権を剥奪された過去があったからだ。

　もっとも、東京五輪にも女子選手として出場していたケリフについては、他でもない国際オリンピック連盟（IOC）が「すべての選手は出場資格および参加規定、適用可能なすべての『医療規定』を順守している」と認めるところ。ゆえに参加自体に問題はないのだが、IBAの検査が考慮されない形での参戦は反発を招いていた。

　そうした中で迎えた初戦でケリフと対峙したカリニは、開始わずか46秒で2発を被弾すると、自ら棄権を選択。相手の勝利が場内にコールされると、ケリフからの握手を拒否。キャンバスに両膝をつき、悔しさもあいまって泣き崩れた。

　この結果がケリフに対する逆風を強めたのは言うまでもない。そんな世間の論争を目の当たりにしたカリニは、現地時間8月2日に地元紙『Gazzetta dello Sport』で「私たちのことで論争が起きているのは悲しく思う。私はIOCが彼女の試合出場を認めたのであれば、その決定を尊重するだけです」と強調。そして握手を拒否し、挨拶も拒んだ試合当日の行動を釈明した。

「何かを意図してやったわけではないんです。とにかく彼女（ケリフ）と他の関係者の人たちに謝りたい。私の間違った行動だったと思う。私のオリンピックが、ああいう形で水の泡になり、自分自身に怒ってしまって……。とにかくあの瞬間は自分の命も守らなければならないと感じたんです」

　ケリフに対しての想いを問われ、「もしも会えるのなら私は彼女を抱きしめたい」と語ったカリニ。世間の大きな反響を受け、その胸中は複雑なものとなっているようだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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